ハードディスクレコーダーの買い換え時のことを考えて…。
いや、昨年の11月に買ったばかりなので買い換えはまだまだ先だけれど、いずれは買い換えるときが来る。こんなことを考えたのは、友人に「ハードディスクレコーダーは便利だぞ」と話したときになかなか鋭い指摘をされたのがきっかけなのだが。
まず、いまどきのレコーダーについて。「(ハードディスク搭載)DVDレコーダー」という言い方をするけれど、おそらくは多くの利用者にとって、通常は「ハードディスクが主でDVDは従」の関係だろう。ふだんはハードディスクに番組を録画して再生する(そして大抵、見たら消す)。保存版にしたいとか、ひとに見せたいときだけDVDに記録するんじゃなかろうか。
DVDというリムーバブルなメディアの利点のひとつは、入れ替えることでいわば無限の容量を実現する点にある。だが(DLでない、通常の)記録用DVDの容量は4.3GB(ギガバイト)程度である一方、最近のレコーダーには500GBくらいの容量のものが珍しくないから、それと対応するDVDの枚数を考えると100枚あっても足りないことになる。ビデオテープやCD-Rなどを想像しても、個人で100枚以上のメディアを利用するというのは、かなりコレクター気質のひとに限られるだろう。日常の利用においては、面倒なメディアの入れ替えをしなくてよいハードディスクだけ使っていれば十分な人が多いのではないか。
このあたりは、MDプレーヤー(あるいはCDでもいいかも)とiPodの関係と似ているように思う。MD文化に慣れた人にとって、アルバムくらいの単位で記録されたMDディスクをたくさん持っていて、それを入れ替えて使うのは「当たり前」のことだろう。でも、ひとたびiPodに慣れて、いちいちメディアの交換などせずに大量の曲を指先ひとつでハンドリングする世界を知ると、MDのようなやりかたはひどく面倒なものに思えてくる。
映像の録画・再生環境についても、メディアの入れ替えなしに大量のコンテンツを記録・再生できれば、そちらを選ぶ消費者が多いだろう。そして大容量化の道を進むハードディスクは、その目的にかなうものだと思われる。
さて、ここで冒頭の話に戻るのだが、「ハードディスク上の番組を再生することのラクチンさ」を賞賛した私に対して友人がぶつけたふたつの疑問が「たくさんの番組をため込んでいたら、見たい番組を見つけるのが面倒だろう」、「ハードディスクにたくさんため込んだとして、買い換えの時はどうなるのだ」ということだった。
うむむ。どちらも本質を突いた問いかけに思える。
まず、最初の「大量のコンテンツをどうやってハンドリングするのか」という問いについて。完全に「見たら消す」スタイルの利用の場合はこの問題は発生しないが、「この番組はちょっと残しておこう」と思ったとたん、レコーダー内の番組リストはふくれあがり始める。PSXの場合、ジャンル別などいくつかの並び替え機能はあるが、基本的には番組リストが縦一列にずらりと並ぶという管理だから、たしかにこれは問題となる。使い始めて2ヶ月程度だが、PSXご自慢の高速スクロールを持ってしても、番組を素早く見つけることがだんだん難しくなり始めている(貯めたがるのは貧乏性ゆえ?)。
この問題についてはレコーダを作っている各メーカーも認識しており、主に「番組をフォルダ分けして管理する」方向でいろいろな機能をアピールしている。大量のコンテンツを多面的にグルーピング・ハンドリングするという点では、iTunesのUIも参考になりそうだ。
そして、表題と関係する「ハードディスクに録画データをため込んでいるとして、買い換えのときは?」という問題。こちらの問題については、多くのメーカーは(おそらくは問題の存在は認識しつつ)今のところ手を打っていないように見える。ユーザーとしては、なるべく少ない手間で旧レコーダーから新レコーダーにデータを移したいところだが、そういうサービスあるいは機能を提供しているメーカーはあるだろうか。知っている範囲では、東芝の「ネット de ダビング」機能くらいだ。大容量のハードディスクレコーダーを使う消費者が増えれば増えるほど、こういう機能はニーズが高まると思うのだが。
デジタル機器で「中に保存されているデータ」の移行が問題になるという観点で、携帯電話と比べてみよう。ケータイを買い換えるとき、販売店でアドレス帳の情報が移行できないと言われたら納得できないだろう。利用者のニーズが強いので、現在は旧端末から新端末にアドレス帳を移行できないケースはあまり無いのではなかろうか。保存しているメールやデジカメ画像についても移行を望むユーザーが増えつつあると思うが、それらについては(現状)移行できなかったり、ユーザーの手間(メモリカードやPCのデータ管理ソフトを使う)が必要な場合も多い。
データ移行がスムーズに行えることを謳うことは、メーカーにとってもメリットが大きいと思えるのだが(メーカーごとの(データ転送)独自プロトコルであれば、それはロックイン効果も持つ)。現状ではそのあたりを意識しているメーカーは(東芝を除くと)なさそうだ。とりあえず現状に対する個人的な解決法としては、DVD-RW経由で録画データ(VOBデータ)をPC(の外付けHDD)に移し、PCをメディアサーバー的に使う方向で考えている。家電メーカーがのんびりしていると、日本でもMCEのような(あるいはiMacのような)「PCセントリックなアプローチの方が便利だ」という流れになるやも知れず。家電メーカーがiPodに惨敗した轍を踏まないといいのだが。