映画

2006-09-13

スーパーマンの帰還

『スーパーマン・リターンズ』を劇場で観てきた。

クリストファー・リーヴが主演した『スーパーマン』(1978年)、『 スーパーマン II/冒険篇』(1981年)の続編という位置づけらしいので、旧2作をテレビで“復習”してから観たのだけれど…。

まず、オープニングが素晴らしい。 旧『スーパーマン』のオープニング(クリプトン星から地球への旅)を現在の技術で再構成した圧倒的にダイナミックな映像。音楽はもちろんジョン・ウィリアムズのテーマ曲。一気に映画の世界に入っていけた。

物語に入ってからも、旧作のエッセンスに驚くほど忠実であろうとしてる。と同時に、旧作の「安っぽさ」を払拭している。このふたつを両立させているのが、なかなかすごい離れ業だと感じた。

今回見直してあらためて感じたことのなのだけれど、旧シリーズの方は話の筋立ても、細かなエピソードも、キャラクターも、結構安っぽいというか、子どもっぽい印象が強い。映像面でも、同時期の『スター・ウォーズ』シリーズと比べると、(当時の小学生の眼から見ても)一まわりユルい(B級の)肌合いを感じさせた。

だが今回の新作は、映像面でのスキはない。物語やキャラクターも、コミカルな要素は残しつつも、全体のトーンはシリアスなテイストを保っている。このあたりの「端正で生真面目」なテイストは、『X-MEN』シリーズでも見せたブライアン・シンガー監督の持ち味のように思われ、個人的には気に入った。

キャラクターでは、悪漢レックス・ルーサーを演じたケヴィン・スペイシーが素晴らしい。ジーン・ハックマンが演じたレックス・ルーサーの印象を巧みに継承しつつ(これほど近い雰囲気が出るとは思わなかった)、新作にふさわしい悪役像を演じきっている。サプライズは「地球での母」役に エヴァ・マリー・セイント! 失礼ながら、まだご存命とは知らなかった。自分にとっては『北北西に進路をとれ』でのヒロイン像が鮮明だが、いい感じのおばあちゃんを演じていました。

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2006-07-14

『スキャナー・ダークリー』 観たい

暑くて、湿度が高い。ぬるま湯のような夏の夕暮れの空気。快適ではないが、好きな季節。

映画 『スキャナー・ダークリー』 (A Scanner Darkly) の予告編を見た。そそられる。

 『スキャナー・ダークリー』 予告編 (要 QuickTime)

フィリップ・K・ディックのSF小説の映画化。かつては「暗闇のスキャナー」というタイトルで出ていた。映画化に合わせて、新訳された「スキャナー・ダークリー」がハヤカワ文庫SFから出ている。

で、予告編。デジタル・ロトスコープ処理された映画になるということは知っていた。同様の手法で創られたリチャード・リンクレーター監督の前作『ウェイキング・ライフ』は観ていないが、雑誌に載った画像としては見ていて、「ちょっと目先を変えただけのテクニック」だと軽く見ていた。けれど、今度の予告編を見て、意識が変わる。ディックの原作を映画化するにあたって、猥雑かつ幻覚が入り交じった(物語のなかの)現実を映像化するのに、この手法はかなりフィットするかもしれない。

映画のコピーは 《 EVERYTHING IS NOT GOING TO BE OK 》。 期待して秋を待つ。

【参考】 山形浩生さん訳による『暗闇のスキャナー』PDF版 (ご本人が公開中)

(11月14日追記) 秋も終わろうとしているのにいまだ公開されず。 12月公開か? それにしても、日本版の公式サイト(か? ワーナーブラザーズのところ)はひどい。やたらと重い(あるいは回線が細い?)Flashを読み込ませる割に、インタラクションはろくになし。最近じゃ、ここまでダメなつくりのサイトはなかなかないな。

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2006-03-07

アフリカの悪夢的現実

NHK BSでやっていたすさまじいドキュメンタリー映画。放映数分前に気づいて、あわてて録画。

『ダーウィンの悪夢』

人口約3500万人のうち200万人あまりが食糧不足に苦しむといわれるアフリカ・タンザニア共和国。その北部に広がる世界第3位の湖・ビクトリア湖からは連日、白身魚ナイルパーチの切り身が冷凍食材としてヨーロッパ・日本にむけ大型ジェット輸送機で輸出されている。しかし、この食料輸出は一部の人を潤すだけで飢餓・貧困・HIV感染のまん延・武力紛争の続発といったアフリカのかかえる問題を解決する糸口になっていない。魚の加工工場と空港がある湖畔の町・ムワンベにカメラを据え工場主・漁師・輸送機パイロット・ストリートチルドレンなどさまざまな人々を見つめることでアフリカの構造的な貧困問題を浮き彫りにする。

テレビでやると思ってなかった。雑誌『映画秘宝』や柳下毅一郎さんの日記なんかで紹介されていて気になっていた作品。劇場公開も予定されているはず。
(米アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門にもノミネートされていたが、『皇帝ペンギン』が受賞)

昨年末から、たまたまアフリカがらみの映画をよく観ている。ニコラス・ケイジが現代の武器商人を演じた『ロード・オブ・ウォー』。そしてルワンダ内戦を背景に(実話をもとに)した『ホテル・ルワンダ』

いずれも素晴らしい作品なのだけれど、心に突き刺さるのはサハラ以南のアフリカ諸国の悪夢的な現実だ。『ロード・オブ・ウォー』で描かれるリベリア、シエラレオネ。『ホテル・ルワンダ』のルワンダ。『ダーウィンの悪夢』のタンザニア。

『ダーウィンの悪夢』を製作したのがフランス・ベルギー・オーストリアということに皮肉な印象を受ける。フランスとベルギーはともにアフリカの多くの国の旧宗主国であり、アフリカから搾取する構造は過去のものとは言えないのだから。

そして日本人もヴィクトリア湖とその周辺の人々の悲惨な状況に無関係ではない。 まったく知らなかったのだが、ナイルパーチは日本にも輸出されている(もうひとつナイルパーチの解説)。ファミレスや弁当屋の「白身魚のフライ」として、自分もきっとヴィクトリア湖のナイルパーチを食べていたのだ。

それにしても、なぜアフリカなのだろう。もちろん「アフリカ」とひとくくりにするのは乱暴すぎるのだが、貧困・暴力が極めてひどい状態が恒常的に続き、そこから抜け出せない社会が多いのはなぜなのか。抜け出すすべはないのだろうか。

参考: 嶋崎正樹さんによる記事 『ダーウィンの悪夢』 (監督へのインタビューなど紹介されている)

※ 『ダーウィンの悪夢』は、NHK BS1 3月11日(土) 後0:10~2:00に再放送の予定。

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2005-11-11

見逃した? 『Aliens of the Deep』

アイマックス映画の公開予定なんて、チェックしきれないよ。

『ターミネーター』や『タイタニック』のジェームズ・キャメロン監督による海洋ドキュメンタリー(+SFと思われる)『エイリアンズ・オブ・ザ・ディープ』。アメリカでは今年初めの公開だったようで、日本に来るのを楽しみにしていたのだが、ひょっとして品川のIMAXシアターでは公開しちゃったのだろうか(allcinema ONLINEを見ると、日本では今年9月1日に初公開されたと書かれている)。だとしたら痛恨。

以前書いたようにアイマックス映画が好きなので、キャメロンによるIMAX 3D映画『タイタニックの秘密 (Ghosts of the Abyss)』も観た。これまで観たIMAX 3D映画の中では(特に技術面で)最も洗練された作品だと思う。3D映像にありがちなカットの切り替えの際の遠近感のずれみたいなものが皆無で(深海で使えて、なおかつ「レンズの焦点距離の移動とともに視線の交点を変化させる」専用の機材をわざわざ開発するあたりが、実にキャメロンらしい)、さらに実物の(深海に沈んでいる)タイタニック号の映像にCGによる往事のタイタニックの映像をミックスする(しかも動きのずれを全く感じさせない)のが実にドラマチックな効果をあげていた。そもそも、大ヒットが望めないアイマックス映画のために新開発機材(3Dカメラと潜水ロボット)と2機の深海潜水艇を調達してしまうあたり、ジェームズ・キャメロンによる究極の道楽映画という気もする。

そして、新作の『Aliens of the Deep』も、深海の生物や熱水噴出口などを深海潜水艇に乗って(キャメロン自身も)楽しみ、(予告編の映像から想像するに)そこから未来の話に移って、木星の衛星エウロパにあると言われている氷に閉ざされた海にいるかもしれない生命との出会いをCGも駆使して描いているようだ。実に正しい sense of wonder じゃないか!

これはぜひIMAXシアターで観たかったのだけどなあ。

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2005-08-06

人にすすめたくなる映画 『月のひつじ』

くすくす笑ったりハラハラしたりしながら楽しめる、ひとりもイヤな奴が出てこない映画。 あまり知られていない?けれど、おすすめしたいなぁ。

『月のひつじ』 (オーストラリア映画 ・2000年製作)

『月のひつじ』という何だかイメージのつかめない邦題だけれど、原題の "The Dish" を直訳するわけにも行かなかったのだろう。この「お皿」とは、電波望遠鏡の巨大なパラボラアンテナのこと。映画はアポロ宇宙船による人類初の月着陸を背景に、月面の宇宙船との交信を受け持った電波望遠鏡にかかわる人々を描いている。この電波望遠鏡、オーストラリアの田舎町パークスにあり、まわりは牧羊地というのどかなところ。

地味に公開された映画だし、「まぁアポロや電波望遠鏡が見られそうだから、ちょっと見てみよう」という感覚で見たのだが、期待よりもずっとよかった。とても丁寧な脚本で、突然の大役となったスタッフや町の人々の盛り上がりや緊張、任務を果たす中でのトラブルをテンポよく見せてくれる。アポロ11号の「打ち上げ」、「月着陸船の月面への降下」、「月面への第一歩」のそれぞれのシークエンスについては当時の映像・音声を交えてじっくり描いているので、この歴史的なできごとを知るお勉強にもなる。

脇役に至るまでみんなキャラが立っていて、楽しい。「予備電源は『ある』だけじゃダメ」、「お偉いさんは最悪のタイミングで現場にやってくる(対応にはハッタリも必要)」というような教訓もふくみつつ、力を合わせて難局を切り抜けていく様子は、(変な泣かせを入れない)まっとうな「プロジェクトX」といった趣もある(でも、テイストはかなり「ほのぼの」系)。場面場面で笑わせられながら、最後はちょっと感動してしまった。

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2005-07-30

アイマックス映像はいい!(のに…)

アイマックス(IMAX)映像をご存じでしょうか? 巨大なスクリーンに高精細な映像を映し出す映画のフォーマットの一つです。

参考: 大型映像とは何だろう!
参考: IMAX社のページ(英語)

アイマックス映像、素晴らしいんですけどね…。とにかく臨場感!というか目の前にその世界が本当にあるようで、特に主観視点でカメラが移動したりするとホントに没入感を味わえます。ただ大自然を空撮しただけの映像でも感動するくらい。なのに知ってる人が少なくて残念です。

東京だと品川プリンスホテルにあるメルシャン品川IMAXシアターでアイマックス映画を観ることができます。(数年前までは新宿タカシマヤタイムズスクエアにIMAXシアターがあったのですが、残念ながら撤退) 大阪だと、天保山のサントリーミュージアムにアイマックスシアターがあります。

アイマックスで観られる映画にはいくつかタイプがあります。
・IMAXフォーマットで撮影された映画
・IMAX 3Dフォーマットで撮影された立体映画
・通常の映画をIMAXフォーマットにプリントしなおしたもの

IMAX用に映画を作ると、撮影・編集などで通常の35mm映画よりもコストがかかる一方、上映館の少なさから興行面での不利は否めません。いきおい、製作される映画はあまり多くないようです。そのため、IMAXシアターでも通常映画のIMAXフォーマット版が上映される頻度が多くなっている気がします。

でも、ふつーの映画だとIMAXシアターで観てもあまり効果的でない気がするんですよね。精細感は35mmのものと変わらないし、たいていの映画がワイド画面なのにIMAXのフォーマットはワイドでないので、画面の左右をトリミングした形で上映することになるという欠点があります。それでも押井守監督の『イノセンス』は、IMAXシアターで観て、音と映像に酔いしれました。立体感・空間の広がりを強調する撮影スタイルの映画だと効果的なようです。

あとIMAXで観て印象的だった通常映画が、ロバート・ゼメキス監督の『ポーラー・エクスプレス』。フル3D CGで製作された映画ですが、IMAX版は立体映画になっています。たぶん通常版とは全く違う印象(IMAX版の方が圧倒的にスゴイ)になっているのではないでしょうか。IMAXシアターで、毎年クリスマスシーズンに上映するといい(『ポーラー・エクスプレス』は、クリスマスをテーマにした絵本『急行「北極号」』の映画化)と思うんだけどどうでしょう。

それにしてもアイマックスは知られていない。品川のIMAXシアターに行っても、たいていがら空きです。混雑せずに観られるのはいいけれど、閉館したりするとかなりがっかりだなあ、と思い、この記事を書いたしだいです。

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2005-06-24

AFI's 100 YEARS... 100 SONGS

先週、テレビでやっていた。アメリカ映画協会が選んだ「アメリカ映画の中の歌100選」。

なかなか楽しかった。以下、雑感。

いい曲だと思っていたけど名前を知らなかった曲が結構あった。「Everybody's Talkin'」(聴いていたのはカバー・バージョンの方)や、バーブラ・ストライサンドの「Evergreen」など。

「歌」という縛りから見て一番きわどかったのが「ロッキーのテーマ(Gonna Fly Now)」。盛り上がりのところでコーラスが入るだけだから。まぁ、でもこれはみんな入れたくなるよなぁ。

「美女と野獣」は、アンジェラ・ランズベリーが歌う方だよね! わかってるなぁ。

映画『カサブランカ』の「As Time Goes By」はやはりというか第2位だが、これがもともとブロードウェイでまったく当たらなかった曲で、映画会社のワーナーブラザーズが権利を持っていたために(使用料がかからないから)使った曲だ、というのは知らなかった。トリビアっぽい知識。

ヤンキース・スタジアムで試合後にかかる曲「ニューヨーク・ニューヨーク」。フランク・シナトラが歌っているので、昔からあるスタンダード・ナンバーだと思っていたら、1977年の映画『ニューヨーク・ニューヨーク』のために作られた曲だったんだ。しかもロバート・デニーロのダメ出しによって生まれた曲だったとは!

選曲の幅の広さ(ひいてはアメリカ映画の幅の広さ)はほんとにすごい。映画『M*A*S*H』の「Suicide is Painless」や映画『ヘアー』の「アクエリアス」、映画『マペット・ムービー』の「Rainbow Connection」、映画『プロデューサーズ』の「Springtime for Hitler」なんかが選ばれているのは渋すぎ。

フレッド・アステアがアメリカ人にとても愛されているということがわかった。彼の出ている映画をちゃんと見たことがないのだけれど。個人的には、お気に入りの映画『雨に唄えば』から3曲(「Singin' in the Rain」、「Make 'Em Laugh」、「Good Morning」)ランクインしているのがうれしかった。

おまけ: 「雨に唄えば」のパロディCF (要 QuickTime)
 ※ オリジナルがとびきりの名シーンなので、デジタル加工はちょっと冒涜?と感じないでもないけれど

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2005-05-01

最近観た映画

『エターナル・サンシャイン』
気に入った。『トゥルーマン・ショー』のときも思ったが、シリアスな演技のジム・キャリーには感情移入しやすい。ミシェル・ゴンドリーの映画を観るのは初めてだが、彼が監督したミュージックビデオ(daft punkの"Around the World"、Bjorkの"Bachelorette"、Foo Fightersの"Everlong"、Kylie Minogueの"Come into My World")は最高に刺激的な作品だった。この作品では、彼の資質とチャーリー・カウフマンのクセのある脚本がうまくかみ合っているという印象。個人的にも、いいタイミングで出会えた映画。

『下妻物語』 (DVDで見た)
期待以上。昨年の公開時にやたらと評判が良かったので、興味を持ちつつも劇場に足を運べなかった。深田恭子主演の女の子映画だしね。しかし、実際見てみると、参った。クドい物語、クドい撮影(特に色彩)、過剰気味の演出。個々の要素はこれみよがしに類型的で安っぽさすれすれなのに、全体としての映画は安っぽくない。ガツンと来る映画を見たという印象。後味がいいので、また見てみたいと思わせるエンターテイメント映画。

『激突!』 (テレビで見た)
何度目かの鑑賞。1972年のスティーブン・スピルバーグ監督作。個人的にはスピルバーグ作品の中で三本の指に入る好きな作品(残りは『レイダース』と『ジュラシック・パーク』かな)。とにかく演出がうまい。もともとTVムービーだから比較的低予算で撮られているはずだが、ラストの転落シーンの映像には神々しささえ感じる(ちょっと大げさか)。

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