サイエンス

2007-08-19

ツノってなんだ?

何の拍子か、ひとつの疑問が浮かび上がった。 それがどうした、わかったところで何になるというレベルの疑問だけれど。

「ツノ(角)って、補食される動物にしか生えてないような気がするけれど、なんでだろう?」

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2006-09-29

パンダの親指? いや小指も

“パンダの親指”が最終解答でなかったとは、いやいや生き物の形態についてもまだまだ研究が現在進行形なんだなぁ。

日経サイエンス10月号にあった 『“遺体科学”が目指す文化としての解剖学』 という記事が面白かった。比較形態学、遺体科学を研究している遠藤秀紀さんが主人公だ。

遠藤さんの研究スタンスについては、ご自身のページに詳しい。「大量の遺体を収集し、解剖・研究して、遺体から新しい真実を発見する。そして遺体を標本として未来に引き継ぐ」遺体科学を提唱・実践されている。

そういう遠藤さんの研究成果のひとつが、パンダが笹をつかむ手のメカニズムの話。スティーヴン・ジェイ・グールドの『パンダの親指』を読んで、そこでの説明に納得していたものとしては、真実はさらに奇なり、と驚いた。

クマ科の動物であるジャイアントパンダは五本の指が同じ向きに伸びている。人間のように親指が他の指と対向しているわけではないので五本の指ではものをつかむことが難しい。『パンダの親指』では、第一中手骨(親指)側にある撓側種子骨にできた指上の突起が(ヒトでいう)親指の代わりをしていることを紹介し、生き物の身体は環境に適応するために(いわば、手持ちの資源を使って)進化してきたこと、最も合理的な解決でなくても目的にかなっていればよい(生き延びられる)ということを説明していた。

この大枠の説明は今でも間違っていないと思うが、遠藤さんがパンダの手を研究してみると、親指側だけでは笹を掴むのに不十分であることがわかったという。実は小指側にも副手根骨に指状の突起があって(いわば第7の指)、両方の突起があることで親指的な機能を果たしていることを発見。その論文は驚きをもって迎えられたという。

実は遠藤さんの仕事のひとつをそれとは知らず、目にしていた。国立科学博物館の新館3階にある標本コーナーだ。大量の標本がダイナミックに並べられていて強い印象を受けたのだけれど、これは遠藤さんが国立科学博物館に勤務していた頃の集大成的な仕事だったという。すごい人だな。

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2006-06-07

小惑星探査機はやぶさ

小惑星探査機「はやぶさ」チームへの賞賛の意をこめてブックマーク。

「はやぶさ」の成果が科学雑誌「サイエンス」の特集に! (アストロアーツ)

「はやぶさ」プロジェクトが Space Pioneer Award を受賞 (JAXA 宇宙研)

また、宇宙研からの広報によると、帰還用のイオンエンジンの駆動試験に成功したという。今なお、問題も残っているようだけれど、がんばってほしい。

※関連 … 小惑星探査機はやぶさ、イオンエンジン起動試験に成功 (スラッシュドット ジャパン)

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2006-05-18

いただきマンモス?

科学誌 Nature に、マンモスなどの絶滅についての新たな研究が掲載された。それによると、北米でのマンモスなどの絶滅は、ヒトのせいではないらしい。

古生態 : 大型獣絶滅の原因は人類による大量狩猟ではない (日本語要約記事、要登録)

R. Dale Guthrie による研究について、以下のように紹介されている。

先史時代に起こった最大級のミステリーの1つは、今から1万年余り前の、大型獣絶滅の急増という事件である。新たな証拠によって今回、その「真犯人」がみえてきた。この大量絶滅の原因の1つは、北アメリカに新たに到来した人類がマンモスや野生のウマ(Equus ferus)などを捕り尽くしてしまったことにあると考えられてきた。だが今回、600を超える獣・人骨の年代が新たに測定され、絶滅の要因は自然の気候変動などほかにあることが示唆された。

子供の頃に読んだ図鑑では「北米の野生の馬は、ヒトに狩りつくされて絶滅した」と書いてあったが、この研究によればそうではないということのようだ。古生物学の場合、ある時点で定説とされていたことでもくつがえることがままあるので、この研究が決定打となるかはわからないが…。

(参考) Humans cleared of killing off woolly mammoths (カナダCBCニュース)

(参考) マンモスを絶滅に追いやったのは超新星爆発だった!? (AstroArts) ※珍説、かも

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2005-12-19

「自己連想記憶」からたどった記憶

ジェフ・ホーキンス(Jeff Hawkins)の『考える脳 考えるコンピューター』を斜め読み。

「脳の働きを明らかにしたい。そして、その働きを人工の装置の上で実現したい」という著者による、現在進行形の「知能の本質をどうとらえるべきか」という問いかけと仮説。ストレートな書きっぷりが好ましく、それでいて乱暴な我田引水ではない。このジャンルの本としては、かなり読みやすい部類じゃないかと思う。

彼の仮説の中心にあるのが、自己連想記憶(autoassociative memory)による《環境からの入力に対する絶え間ない(時系列に沿った)予測行動》。人間にとってあまりに当たり前なのでほとんど意識していないことの中に「知能の本質」があるのではないかと説明するところ、自分にはなかなか説得力があった。

「自己連想記憶」で思い出したのが、昔のアスキー(月刊ASCII)だ。高校時代だったか、大学の頃か、ニューロコンピュータが話題を集めていた時代に「ニューラル・ネットワーク」について解説する連載記事があった。ニューロコンピュータにはそれほど強い関心を持っていたわけではなかったが、この連載は門外漢にも本質を伝えようとしてくれている感じで、わりと読んでいた(誰が書いていたんだろう)。その中でも一番インパクトが強かったのが、自己連想記憶についての回だった。ディテールは思い出せないが、教師なし学習/不完全な情報から記憶が浮かび上がるあたりが刺激的だったのか。

すぐ何かに使えそうなことじゃないけれど、もう少し追っかけてみたいところ。

(参考)著者によるページ

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2005-08-08

巨大パラボラを体感する

前の記事とのつながりで。国内にも巨大な電波望遠鏡のパラボラアンテナを体感できるところがある。

国立天文台野辺山

45m電波望遠鏡はなかなかの迫力。今年の特別公開(一般公開)は8/20(土)にあるとのこと。誰でも気軽に天文台内を見学できる。今年は45m電波望遠鏡を見学者が操作できるイベント(要抽選)があるらしい。

天文台についてのわかりやすい情報としてはこちら。公開日攻略情報もあり。

天文台マダム日記

国内最大のパラボラがある臼田宇宙空間観測所にもいつか行ってみたいが…。

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2005-07-02

「科学大好き土よう塾」で“ジェット気流”の実験

NHK教育で土曜日の朝9:15からやっている「科学大好き土よう塾」。

たまたまチャンネルを合わせたら、「梅雨」についての解説の中で、“ジェット気流”の実験をやっていた。地球サイズの現象を「抱えられるくらいのサイズで」見せる、鮮やかな実験だった。

実験の手順は、たしか次のようなものだった。


  1. 同心円状に三つの径の違う水槽を配置する。それぞれの水槽は、小さいものから順に現実の地球の高緯度地域(北極圏)・中緯度地域・低緯度地域(熱帯)の役割をする。
  2. それぞれの水槽に水を入れる(水は地球の大気の役割をする)。中央の小さな水槽には氷を入れて冷やし、一番外の大きな水槽は電熱器で暖める。
  3. それらは回転する台に載っている。台をゆっくりと回転させる(地球の自転に相当)。
  4. 中緯度の役割の水槽にアルミの粉を振りかけ、水の動きを把握しやすくする。回転する台の上に取り付けたカメラで水槽の水の流れを撮影する。

こんな説明でイメージできるかな? (映像を見せることができればいいのだけれど)このシンプルな仕掛けで撮影された水の流れが、実にジェット気流(蛇行する偏西風)にそっくりなのだ。脱帽。

参考: 大気大循環についての解説ページ

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2005-06-14

アブラムシ・菌細胞・ブフネラ

アブラムシ(アリマキ)といえば、アリに守られてそのかわりにアリに蜜をあげる、という共生関係を理科の教科書で習ったが、アブラムシの体内にも興味深い共生関係があることを知った。

森山和道さんによる中鉢淳さん(理化学研究所)のインタビュー (NetScience Interview)

うーむ、アブラムシ。植物の師管液という“手に入りやすいけど栄養は少ない”ものをじぃっと吸いつつ、体の中の菌細胞という細胞の中にブフネラというバクテリアを飼っていてビタミンなどの必須アミノ酸をつくってもらう。なかなかがんばらない生き方だ。一方のブフネラの方も、アブラムシの親から子へと世代を超えて受け継がれていくため、アブラムシからもらえるアミノ酸はつくらなくなっていることがゲノム解析から明らかになったとのこと。

そのほか、単為生殖なので子供はクローン(卵胎生)とか、体内のブフネラにはゲノムのコピーが100以上あったりしてほとんど細胞内小器官となりさがって(という価値基準も変だが)いるとか…。アブラムシがこんなに変な虫だったとは。

理化学研究所と東京大学のグループが2000年にブフネラの全ゲノム解析を行なったということだが、全く知らなかった。

参考: 世界で初めて共生微生物「ブフネラ」の全ゲノムを解析

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2005-06-06

白い波頭と地球の熱収支

地球の気候変動について、科学者のさまざまな調査・研究を読むほどに、変動を与えうる要素の多さに圧倒される気がする。温暖化に関する議論では人間による二酸化炭素の排出が大きく扱われるが、それだけを侃々諤々やりあっても、本当の地球の姿は見えてこないのかも。

日経サイエンス2001年9月号に載っていた記事によると、海面に生じる白い波頭が地球の反射率(太陽光を反射する割合)に無視できない影響を及ぼしていることがわかったという。波頭による反射は地球全体では約1500万メガワットに達し、いくつかの温暖化ガスと同程度の影響を気候におよぼしているそうな。

一方で「デイジー・ワールド(仮想惑星に、互いに反射率が異なる白っぽいヒナギクと黒っぽいヒナギクが生育するだけで、環境条件が創発的に制御される)」のような単純化されたモデルも、地球に対する理解を進めるのに役立ったりするわけで。

参考: 地球の反射率(アルベド)に関するふたつの研究
参考: Daisy World Model

BGM: Albedo 0.39 (Vangelis)

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2005-05-05

ヒトの白目は、実はユニーク

「全ての霊長類の中で、ヒトだけが白目を持っている」というのを何かで読んだ。

あらためて調べてみると、「ヒトの目」についての研究が書かれているページが見つかった。 そのページによると、デズモンド・モリス(Desmond Morris)の著書「ボディウォッチング(Bodywatching)」で指摘されているそうだ。

参考: コミュニケーション装置としてのヒトの目の進化

小林洋美さん、幸島司郎さんによる研究について書かれている。
現生種のほぼ半数にあたる霊長類約88種について目の形態を比較したとのことで、

ヒトの目は,着色していない白い強膜が大きく露出しているだけでなく,非常に横長な輪郭を持つ点でも,他の霊長類とは大きく異なっている
ということらしい。

ヒトの目がそのようになったことに対する考察として、以下のような進化的シナリオを提起している。

ヒト祖先種は森を出て完全な地上性生活者となり,体が大型化するにつれて,眼球運動による視野拡大,特に水平方向の視野拡大の必要性が高まった.目の強膜露出度と横長度が霊長類中最大になったのは,このような視野拡大の必要性への適応の結果と考えられる.更に,眼球運動による視野拡大の必要性から生じた眼球の大きな可動性が,露出強膜の白色化という小さな変化で,視線コミュニケーションの可能性を飛躍的に高めたと考えられる.ヒトが霊長類の中で唯一,視線を強調する色彩パターンの目を持つに至ったのは,体の大型化や道具使用によって捕食者に対する視線カモフラージュの必要性が低下し,逆に小集団での狩猟・採集という共同作業のために同種他個体との互恵的協調行動の必要性が高まったためだろう.

ヒトは目で語りたがる動物ということのようだ。興味深い。

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